データガバナンスにおけるデータマッピングとは?プライバシー対応に不可欠な理由


データガバナンスとは、企業や組織が保有・利用するデータを適切に管理・活用するための仕組みであり、その実行基盤となるのがデータマッピングです。

データの品質やセキュリティ、プライバシーを確保しながらデータ活用を進めるには、「どのデータが」「どこで取得され」「どのように利用・共有されているのか」を把握しておく必要があります。

近年は、個人情報保護法やGDPR、CCPAなどのプライバシー規制が強化され、企業にはデータの取り扱いに関する説明責任と透明性が求められています。一方で、部門ごとにデータ管理が分断され、利用実態を十分に把握できていないケースも少なくありません。

このような課題に対応するためには、データガバナンスの一環としてデータマッピングを進めることが重要です。本記事では、データガバナンスの基本的な考え方を整理したうえで、データマッピングの役割や必要性、実務として進める際のポイントを分かりやすく解説します。

【この記事で分かること】

  • データガバナンスとは、ISO/IEC 38505-1などの国際標準でも整理されている「企業がデータを適切に管理・活用するための仕組み」であり、その実行基盤としてデータマッピングが重要な役割を果たす
  • データマッピングは、データマッピングシートなどを用いて、個人情報や業務データの取得元・保存先・利用目的・共有先を可視化し、データガバナンスを実務として機能させるための基盤的な取り組みである
  • データガバナンスの一環としてデータマッピングを進めることで、GDPRやCCPAといったプライバシー法規制や、クッキー(Cookie)を含む利用者データの管理に対応でき、法令遵守とデータ管理の透明性を組織全体で高めることが可能

データガバナンスとは

データガバナンスとは、企業や組織が保有・利用するデータを適切に管理・活用するためのルールや体制の総称です。

データの品質、セキュリティ、プライバシーを確保しながら、ビジネスに活用していくことを目的とする考え方を指します。

近年、データ活用が進む一方で、部門ごとにデータ管理が分断され、利用実態が把握できていないケースは少なくありません。その結果、情報漏えいや法令違反といったリスクが顕在化する恐れがあります。

このような課題を防ぐために、データガバナンスでは「誰が」「どのデータを」「どのようなルールで」管理・利用するのかを明確にすることが求められます。

データガバナンスに関連する国際標準・ガイドライン・法令

データガバナンスに関連する主な国際標準・ガイドライン・法令は、以下のとおりです。

区分 名称 概要
国際標準 ISO/IEC 38505 ITガバナンスの国際規格「ISO/IEC 38500」を基に、データガバナンスを扱う国際標準
ISO/IEC 38505-1 データガバナンスの原則や責任分担を定めた実務向けの規格(改訂プロセスが進行中)
国際ガイドライン AI Risk Management Framework(AI RMF) 米国NISTが策定した、AIおよびデータ活用に伴うリスク管理のフレームワーク
国内ガイドライン データガバナンス読本(IPA) 日本企業向けに、ISO/IEC 38505-1を参照しながら実務観点で整理した解説資料
データガバナンス・ガイドライン(デジタル庁) 経営層向けに、企業でのデータガバナンス運用の考え方やポイントを示した指針
法規制(EU) GDPR(一般データ保護規則) 個人情報保護に関するEUの包括的規制 グローバル標準として影響力が大きい
EU AI法(EU AI Act) AI システムの提供者・利用者に対し、リスクに応じた管理義務や透明性要件を課すEUの包括的規制
EUデータ法(EU Data Act) 生成されたデータの利用・共有に関するアクセス権や企業・個人間のデータ共有の透明性などを確保する包括的規制
法規制(米国) CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法) 米国における代表的な個人情報保護法 GDPRと並び国際的に参照される

データガバナンスとプライバシーの関係

データガバナンスとプライバシーは、密接に関係している概念です。

特に、個人情報や利用者データを扱う企業にとって、プライバシーへの配慮はデータガバナンスの中核といえるでしょう。

プライバシー対応において重要なのは、個人情報そのものだけではなく、クッキーやアクセスログなど「個人を識別し得るデータも含めた管理」です。

これらのデータについて、取得目的や利用範囲、第三者提供の有無を把握し、適切に説明できる状態が求められます。

プライバシーを守るためには、データの実態を正確に理解していることが前提となります。その前提を支えるのが、データガバナンスです。

まずは「データガバナンスとは何か」という基礎や、企業における重要性について改めて理解を深めたい方は、以下の記事をご参照ください。

データガバナンスとは?基礎知識と取り組みの重要性について解説

データガバナンスを支える取り組み

データガバナンスを支える主な取り組みとして、「データマッピング」と「データ分類・データ棚卸し」が挙げられます。

データガバナンスは、方針やルールを定めるだけでは十分とはいえません。

実務に落とし込み、継続的に機能させるためには、複数の具体的な取り組みを組み合わせて進める必要があります。

データマッピング

データマッピングとは、企業内外で扱われているデータの流れや関係性を整理し、可視化する取り組みです。「どのようなデータが」「どこで取得され」「どこに保存され」「どのような目的で利用・共有されているのか」を一覧化します。

データガバナンスの観点では、データマッピングは単なる業務整理ではなく、組織としてどのようなデータ処理を行っているのかを説明可能な状態にするための基盤と位置づけられます。

特に、個人情報や利用者データを適切に管理し、プライバシー保護や法令対応を実務として進めるためには、データの取得元や利用目的、提供先の正確な把握が不可欠です。

データマッピングは、システム単位や部門単位で断片的に管理されがちなデータを俯瞰し、組織全体としてのデータの全体像を把握するための手段といえます。

データガバナンスを進めるうえでの前提整理の工程であり、この後に続く管理ルール策定や運用設計の土台となります。

データ分類・データ棚卸し

データ分類やデータ棚卸しも、データガバナンスを支える重要な取り組みです。

具体的には、保有しているデータを種類ごとに整理し、重要度やリスクの度合いを明確にする作業を指します。

たとえば、個人情報、機密情報、業務データなどを区別することで、管理レベルや取り扱いルールを適切に設定できます。

データマッピングが「流れ」を把握する取り組みであるのに対し、データ分類は「性質」を整理する取り組みといえます。両者を組み合わせることで、より実効性の高いデータガバナンスを実現できるでしょう。

データガバナンスにデータマッピングが必要な理由

データガバナンスにデータマッピングが必要な理由は、主に以下の3つです。

  • データガバナンスを実効性のあるものにするため
  • データの価値や品質を担保するため
  • プライバシー対応を支える基盤とするため

それぞれ詳しく見ていきましょう。

データガバナンスを実効性のあるものにするため

データマッピングは、データガバナンスを実効性のある取り組みとして機能させるための基盤となります。

データガバナンスを機能させるには、データの所在と流れを正確に把握しておく必要があります。

どのシステムでどのデータが扱われているのかが分からなければ、管理ルールを定めても現場で守られにくいためです。

では、実際にどのような手順でガバナンスの体制を構築し、運用に乗せていけばよいのでしょうか。全体的なロードマップについては、以下の記事で詳しく解説しています。

データの「地図」を描く――データガバナンスとデータマッピング

データマッピングによってデータの流れを可視化することで、想定外のデータ利用や不要なデータ保管といった問題を発見しやすくなります。

データの価値や品質を担保するため

データマッピングは、データの価値や品質を担保するうえでも重要な取り組みです。

企業経営においては、単なる数値や記録としてのデータを、意思決定や行動の基準となる「インテリジェンス」へと変換して活用することが求められます。

データマッピングによってデータを分析・整理することで、事実や概念を表現する記号としての「データ」が、意味や背景を持つ「インフォメーション」に変換されます。

その結果、業務にデータを取得・利用する価値やリスクが明確になるため、データの価値や品質を担保したうえで、質の高いインテリジェンスとして活用できるようになります。

プライバシー対応を支える基盤とするため

データマッピングは、データガバナンスにおけるプライバシー対応を実務として支える基盤となります。

プライバシー対応は、データガバナンスの重要な目的の1つです。

個人情報や利用者データを適切に管理するためには、「どのデータを、どの目的で、どこまで利用しているのか」を、社内外に対して説明できる状態が求められます。

たとえば、利用目的の明示、同意管理へのオプトイン・オプトアウト対応、第三者提供の管理などは、いずれもデータの取得元や利用範囲、流れを正確に把握していることが前提となります。

クッキーやアクセス解析ツールを利用している場合も同様で、データマッピングを通じてデータの流れを可視化してはじめて、適切な説明と管理が可能となります。

データガバナンスの一環としてデータマッピングを進めるポイント

データガバナンスを実務として機能させるためには、データマッピングを段階的かつ継続的に進めることが重要です。

データマッピングは、単独の作業として実施するものではありません。データガバナンスの取り組みの一環として位置づけ、管理ルールや運用体制と連動させながら進める必要があります。

まず意識すべきポイントは、最初から網羅的・完璧なデータマッピングを目指さないことです。

個人情報や外部提供が関係するデータなど、データ処理リスクの高い領域から優先的に着手するのが現実的です。

たとえば、以下の順で整理を進めることで、プライバシーリスクや法令対応の観点から重要度の高い領域を効率的に可視化できます。

  1. 個人情報やCookieなど、本人の権利に直接影響するデータ
  2. 広告配信・アクセス解析など、第三者提供が発生するデータ
  3. 業務委託先やグループ会社と共有されるデータ
  4. その他のデータ

また、データガバナンスは一度整備して終わりではありません。

システム変更や新サービスの導入に応じて、データの流れや利用状況は変化します。そのため、データマッピングも定期的に見直し、更新していく前提で運用することが求められます。

データガバナンス・データマッピングに関するよくある質問

データガバナンス・データマッピングに関するよくある質問と、その回答を紹介します。

データガバナンスコードとは何ですか?

データガバナンスコードとは、企業や組織がデータを適切に管理・活用するための基本方針や行動指針をまとめたルール体系です。

データの取得・利用・共有・保護に関する考え方や責任の所在を明確にし、品質確保やプライバシー保護、法令遵守を組織的に実現することを目的としています。

データガバナンスにはどのような段階が含まれますか?

データガバナンスには、方針策定から運用・改善までの複数の段階が含まれます。

詳しくは、こちらをご確認ください。

データマッピングシートとは何ですか?

データマッピングシートとは、企業が扱うデータの種類や取得元、利用目的、保存先、共有先などを一覧で整理・可視化した管理資料です。

データの流れや利用実態を把握し、データガバナンスやプライバシー対応を実務として進めるための基礎資料として用いられます。

データガバナンスの第一歩としてデータマッピングに取り組もう

データガバナンスは、単なる方針策定にとどまるものではありません。組織全体でデータの所在や流れ、利用目的を正確に把握し、安全かつ透明性のある形でデータを管理・活用していくための継続的な取り組みです。その実行基盤となるのが、データマッピングです。

たとえばEU/EEA域内の個人データ処理において、一定の要件(大規模なデータ主体のモニタリングや要配慮データの処理など)を満たす場合、GDPRではDPO(データ保護オフィサー)の設置が管理者に義務付けられています。

DPOが適切にGDPR遵守を支援するためには、管理者がどのような個人データ処理を行っているかを正確に把握・記録していることが前提となります。

この点で重要となるのが、GDPRで作成が求められる処理記録(RoPA)です。RoPAを整備するためには、個人データの取得元や利用目的、保存先、第三者提供の有無といった情報を網羅的に整理する必要があり、データマッピングはその基本的な資料に位置づけられます。

DPOアウトソーシングサービスやDPO補佐サービスを活用する場合であっても、全社的なデータマッピングを進めておくことは、実効性のあるプライバシー対応につながります。

日本のインターネットのパイオニアである株式会社インターネットイニシアティブは、データマッピングツールの導入支援を行っています。個人データ管理にお悩みの場合、ぜひお気軽にご相談ください。

また、データガバナンスやプライバシー対応の実務を進めるうえでは、法令への対応に加え、同意管理や利用者への説明を適切に行う仕組みづくりが欠かせません。たとえば、クッキーやトラッキングに関する同意の取得・管理は、Webサイト運用における代表的な対応領域の1つです。

GDPR、CCPA、電気通信事業法など各国のプライバシー規制に対応するクッキー同意管理ツール「STRIGHT(ストライト)」は、このような企業の実務対応を支援します。同意管理に課題を抱えている場合、ぜひSTRIGHTの導入をご検討ください。

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