- 2026年 6月 24日
先日閣議決定された個人情報保護法の2026年改正法案―
改正法案のポイントはいくつかあるが、特に、①Cookie ID等への規制、②課徴金リスク、③委託先管理は、いずれも企業のデータガバナンス体制そのものの適否を問う問題であり、企業の実務担当者からの相談も多い問題点である。
詳細はガイドラインやQ&Aにより明らかになると予想されるが、本稿では、この3つのテーマについて、データガバナンスの観点から見た「今から備える」べき実務対応を整理する。
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1.CookieID等への規制:連絡可能個人関連情報の新設と実務対応の増加
改正法案では、従来の個人関連情報のうち、特定の個人に対する連絡その他の情報の伝達に利用することができる一定の記述等が含まれる個人関連情報(Cookie ID、電話番号、住所、メールアドレスなど)を「連絡可能個人関連情報」と新たに定義し、不適正利用及び不正取得が禁止されている(31条の2、2条8項)。
特に、「連絡可能個人関連情報」という概念が新設されたことにより、企業においては以下のような実務対応が重要となる。
- Cookieを含むデータの棚卸し(データマッピング)
- データフローの可視化
- 個人情報保護台帳の再整理および継続的更新
- 関係者、関係部門(マーケティング・IT部門など)の整理と連携強化
連絡可能個人関連情報の不適正利用及び不正取得は、後述する課徴金の対象行為ではないが、勧告・命令の対象にはなる。勧告・命令は、課徴金のような経済的不利益を課す措置ではないものの、対応コストがかかるだけでなく、公表等により企業の社会的信頼が低下するなどの影響があるため、企業のデータガバナンス体制を一層強化し、これらの実務対応を行うことが必要だ。
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2.課徴金制度:規律遵守の実効性強化
課徴金制度は、個人情報保護法の規律遵守の実効性確保の手段として位置付けられるものだ。もっとも、単なる制裁強化にとどまらず、企業のデータガバナンスの適切性を評価する枠組みとして機能する点に特徴がある。
課徴金の対象行為は、不適正利用・取得、同意を得ない第三者提供など所定の違法行為であり、かつ、当該違反行為の対価を得た場合に限定されている(詳細は下記既報)が、留意すべきなのは、実際の執行の判断において、単なる違反事実の有無にとどまらず、違反発生に至る背景事情(事前のリスク評価、予防措置の有無等)や事後対応も重視される可能性がある点である。
この点から、企業においては以下のような実務対応が重要となる。
- データフローの可視化
- データガバナンスのための体制構築
- 同意管理プロセスの設計見直し
- 目的外利用を防止する運用・システム統制の整備
- ログの保存・モニタリング体制の整備
- 第三者提供の記録管理
- プライバシーポリシー等に記載された利用目的と実際の運用の整合性確認
課徴金という制度が導入されたこと自体で、企業のデータガバナンスを促進するインパクトがあるといえる。
すなわち、形式的なコンプライアンス体制の整備ではなく、実質的に機能するガバナンス体制の構築が求められることになる。
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課徴金の対象についてはこちらの質問事例: |
3.委託先管理:担当者の負荷が最も増える領域
改正法案では、データ処理等の委託を受けた事業者について、委託された個人情報の目的外利用が禁止されている(30条の3)。委託元の企業は、委託先の監督義務を負っているから、委託先が目的外利用の義務に違反した場合、委託元も監督義務違反を問われる可能性がある。
この点から、企業においては以下のような実務対応が重要となる。
- 委託先リストの更新(再委託含む)
- AI・SaaS利用を含む委託先管理体制の整理
- 委託先の安全管理措置の定期的レビュー
- 委託契約書の更新(再委託・ログ管理・インシデント対応)
- 越境移転を含む委託先管理の見直し
- 委託先のアクセス管理・監査体制の確認
委託先管理の不備は、委託元である自社の制裁・課徴金リスクに直結するため、注意が必要だ。
4.まとめ
改正法の詳細は下位法令、ガイドライン、Q&Aを待つことになるが、施行期日は公布の日から起算して2年を超えない範囲とされており、実務対応の準備期間としては必ずしも十分に余裕があるとは言い切れない。
もっとも、現時点で直ちに全面的な制度改修や運用変更を求められるものではなく、まずは既存のデータ管理実態を整理し、改正内容との関係を段階的に確認していくことが現実的な対応となる。
その上で実務担当者としては、①データフローや保有データの棚卸し・可視化、②Cookie ID等を含む各種データの取得・利用状況の整理(特に第三者提供や外部連携の有無の確認)、③委託先・再委託先を含む管理実態と契約内容の点検、④ログ取得やアクセス管理など既存システム上の統制状況の把握、⑤課徴金リスクも踏まえた社内報告・判断プロセスの整理、⑥マーケティング・IT・法務等の関係部門間の連携体制の再確認、などを通じて、現行のデータガバナンスの全体像を一度整理しておくことが望ましい。
なお、Cookie ID等の利用については、その取扱いは利用態様や他の個人情報との関係等によって個別に検討される余地があると考えられるため、今後示されるガイドライン等も踏まえながら、必要な範囲で運用の見直しを検討していくことになる。
このように、現時点では過度に結論を先取りするのではなく、制度の詳細化を見据えつつ、既存運用の棚卸しと論点整理を進めておくことが、結果として円滑な対応につながるだろう。




