【PR】ダークパターンとは?Web担当者が抑えておきたいリスク


ダークパターン、知らないうちに損してる、消費者を意図しない買い物に誘導するウェブデザイン、誘導された消費者、ダークパターン作成に携わったデザイナー

ダークパターン(Dark pattern)という言葉を聞いたことはありますか?最近は様々なメディアで取り上げられているため、言葉だけは聞いたことがあるけど、自分の仕事の中でどのように関わってくるのか気にしたことがない方も多いのではないでしょうか。

BizRisではダークパターンについて以前から警鐘を鳴らしており、世界のダークパターン規制の最新動向について発信してきました。
今回はマーケティングの側面からダークパターンに関する実務ポイントを解説します。

UIやUXを設計するWebデザイナーやWebディレクター、マーケティング担当者の方々にとっては良くご存知の内容かもしれませんが、新年度になり新入社員や転職、異動でこれから勉強をしなければという方もいらっしゃるかと思います。また、最近よく聞く言葉なので気になっているが、自分が騙されないためにも怪しげや不誠実なサイトはどういうものかというのを知っておきたいという方もいらっしゃるでしょう。

本記事では改めて簡潔に解説いたしますのでダークパターンに該当するケースやリスクをぜひ押さえて頂ければ幸いです。

ダークパターンとは?

ダークパターンとはユーザーを意図的に騙し、誤解させるように設計されたデザインやUIのことを指します。ユーザーにとって不利益な選択に誘導させることは勿論、明らかにわかりにくいデザインやユーザーにとって不親切な設計をされているものもダークパターンに該当する可能性があります。

このダークパターンという言葉はUXデザイナーのHarry Brignull(ハリー・ブリヌル)氏が提唱したものとなり、同氏が立ち上げたウェブサイト「https://darkpatterns.org(現在はhttps://deceptive.design)」で以下のように定義されています。

Deceptive patterns (also known as “dark patterns”) are tricks used in websites and apps that make you do things that you didn’t mean to, like buying or signing up for something.
「ディセプティブパターン(いわゆる”ダークパターン”)は、Webサイトやアプリ等で、あなたの意図に反して何かを購入させたり、何かに申し込ませる等の行動を取らせるために使われるトリックである」

(Brignull, H., Leiser, M., Santos, C., & Doshi, K. (2023, April 25). Deceptive patterns – user interfaces designed to trick you. deceptive.design. Retrieved April 25, 2023, from https://www.deceptive.design/)

ダークパターン イメージ

ダークパターンの種類と具体例

2019年にプリンストン大学のArunesh Mathur(アルネシュ・マトゥル)氏をはじめとした研究チームが11,000のECサイトの約53,000の商品ページを調査し、ダークパターンの手法を7つに分類しました。それぞれについて具体例も交えて紹介いたします。

手法 内容 具体例
1. Sneaking – こっそり
  • バスケットに忍び込ませる
  • 費用を隠す
  • サブスクリプションであることを隠す
  • カートに入れた記憶がない商品が入っている
  • ユーザーに示してなかった料金を最終的な決済画面で表示する
  • 1回限りの購入や無料会員だと思わせて定期購入させる
2. Urgency – 緊急性
  • カウントダウンタイマー
  • 期間限定のメッセージ
  • カウントダウンタイマーを使って取引や割引が期限切れになることをユーザーに示す
  • 期間を指定せずに取引やセール期限を示す
3. Misdirection – 誘導
  • 羞恥心の植え付け
  • 視覚的干渉
  • 紛らわしい質問
  • 押し売り
  • 言葉や感情を利用してユーザーが特定の選択を行わないように誘導する
  • デザインを利用してユーザーを特定の選択に誘導したり、逆に選択をさせないようにする
  • 紛らわしい質問をしてユーザーに特定の選択をさせる
  • 高価な商品をあらかじめ選択したり、より高価な商品を購入するようにユーザーに圧力をかける
4. Social Proof – 社会的証明
  • アクティビティメッセージ
  • お客様の声
  • Webサイト上の他のユーザーのアクティビティ(購入、閲覧、訪問など)を知らせる
  • 出所が不明なお客様の声(ユーザーレビューなど)を示す
5. Scarcity – 希少性
  • 在庫僅少のメッセージ
  • 需要が高いメッセージ
  • 数量限定であることをユーザーに示す
  • 商品需要が高く、すぐに売り切れる可能性が高いことをユーザーに示す
6. Obstruction – 妨害
  • キャンセルが困難
  • 簡単に申し込みはできるが、解約は難しいこと
7. Forced Action – 強制
  • 強制登録
  • タスクを完了するために、ユーザーアカウント作成や情報共有を強要する

(Mathur, Arunesh and Acar, Gunes and Friedman, Michael and Lucherini, Elena and Mayer, Jonathan and Chetty, Marshini and Narayanan, Arvind. MDark Patterns at Scale: Findings from a Crawl of 11K Shopping Websites. Proc. ACM Hum.-Comput. Interact. November 2019. https://arxiv.org/pdf/1907.07032.pdf)

上記のようにダークパターンの手法は複数ありますが、近年日本では特に定期購入に関係するトラブルが急増しています。「いつでも解約できると言われたが解約がなかなかできない」などの相談が多く寄せられており、社会問題として認識されています。
下の表はPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された2021年から2023年の相談件数の推移です。

年度 2021年 2022年 2023年
相談件数 58,530件 97,683件 10,558件
(前年同期 8,635件)

※相談件数は2023年5月31日現在のデータとなります。消費者生活センター等からの経路相談は含まれておりません。また、定期購入に関する相談のうち、通信販売で購入した相談(うち「商品」に関するもの)に限定して集計された件数となります。

引用元:https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/subscription_traps.html

また、インターネット広告配信大手のLINEヤフーはネット広告の審査基準を満たさなかった広告で、ダークパターンが増加していると発表しました。広告配信のように審査基準があるものは一定数除外できますが、様々な場所・手法でダークパターンが使われているため、一般消費者の被害件数も増え続けている現状です。

2024年4月3日にNHKのクローズアップ現代でダークパターンについて特集が組まれました。
知らないうちに損してる!?ネットショッピングの“落とし穴”
放送内容のテキスト

番組では取材や専門家協力の検証を通し、ダークパターンの手法を用いることで消費者の行動がどのように誘導されるのか紹介しました。

また、ネットサービスを提供する企業へ独自のアンケート調査を行い、その結果の公表もしております。
「ダークパターン」とは?7つの類型を解説/企業30社 独自アンケート

今回の放送で当社コンサルタントが講師をしたセミナーのコメントも取り上げられています。
メディア掲載

ダークパターンが発生する背景

ここまで紹介したようにダークパターンは、意図的にユーザーの選択肢を狭め、不利益を発生させてしまう手法となります。このため、サービスやWebページの公開前に、倫理的な観点で入念にチェックをし、もし該当する可能性がある場合は公開しないことが好ましいと言えます。ただ、そのような自浄作用が働かない背景として、個人レベルの問題ではなく企業の姿勢も影響しています。

マーケティングの現場でダークパターンを使ってしまう理由

使ってしまう理由には以下のようなものがあります。

背景 担当者心理
昔からマーケティング手法として使用され続けている 代表的な手法は活用していきたい
競合他社が同じ手法を既に行っている 競合他社に負けてしまうことが怖い
短期的な収益が発生しやすいから 目標数値を達成しないと評価に影響が出る

例えば、商品購入やサービス利用の際にメールマガジンの登録が半強制的であったり、登録しないと先に進めない手法は、Webサービスにおけるマーケティング手法として長らく採用されてきました。最近では、ダークパターンへの問題提起がなされていますが、「昔から広く使われてきた」という事実が、ダークパターンを使ってしまう動機となっているようです。

また、マーケティングの現場では、競合先の各種施策を調査することが非常に重要です。もし、競合先が効果的な施策を実施している場合、自社も負けないように対抗策を実施したい、このケースは特に負けたくないという担当者心理が、ダークパターンを正当化してしまう要因と考えられそうです。

加えて、ダークパターンを用いた結果としてコンバージョン(CV)が発生しやすい傾向があります。担当部署の数値目標を達成するために、とにかくユーザーのクリックを促す効率的なデザインやUIにしてしまうケースもあるでしょう。数値達成は大切ですが、消費者の方々の企業を見る目は日に日に厳しくなってきています。その結果ダークパターンを採用してしまうと不誠実な会社としての悪評がたち、SNSで拡散されるなど予期しない影響を受ける可能性があります。

マーケティング イメージ

ダークパターンとならないために注意すること

ダークパターン回避のためには、担当者レベルでの個々の意識向上だけでなく、企業としての組織的な取組み、例えば複数の目によるクロスチェック等の相互牽制機能が重要となります。また、必要に応じて、第三者性を持つ社外専門家等の意見を取り入れるといった客観的かつ重層的なレビュー体制の構築も効果が期待できます。

現場担当者だけではなく、組織的にダークパターンを採用しないという共通認識、ダークパターンを採用しやすい社内風土を許さないという意識が肝要です。

注意していてもダークパターンになっているかも?

Webサイトの表示やマーケティングの手法がダークパターンに当てはまっていないか注意していても、実はダークパターンになっていたということもありえます。

例えば、Webサイトで見かけることが増えたクッキーバナーですが、ただ導入しているだけで、表示方法や設定方法などから法規制要件に適合できていなかったり、ダークパターンになっているケースもあります。

そのようなクッキーバナーを避けるためのNG例の解説、GDPRやCCPAに準拠した実装方法について当サイトでは資料としてまとめています。

資料のダウンロードは下記のページより行えますので、ぜひお気軽にご覧ください。


すぐに役立つ! クッキーバナー表示のNG集

ダークパターンのリスク

法令違反

ダークパターンが違法になるかは国によって異なるのが現状です。海外・日本のダークパターンに関する規制や実際に発生した制裁金については下記のBizRisコンテンツ内で詳しく解説をしています。

ダークパターンは短期的に収益をプラスにすることがありますが、一方で様々なリスクがあります。その多くは中長期的に影響を与えるものになります。

日本の場合

日本ではまだダークパターンに対して直接的・包括的な規制はありませんが、景品表示法や特定商取引法等の違反に該当する可能性があります。例えば詐欺的な定期購入商法やステルスマーケティングはその一例です。詳細は下記ページをご参照ください。

海外の場合

具体的にダークパターンについて罰則規定がある国や地域では制裁金が発生する可能性があります。これまで高額の制裁金事象には下記のものがあります。

企業 国・地域 制裁金
Epic Games 米国(連邦) 5億2,000万ドル(約710億円)
Vonage 米国(連邦) 1億ドル(約150億円)

引用元:https://portal.bizrisk.iij.jp/news/924
    https://portal.bizrisk.iij.jp/article/darkpatterns

Amazonは何百万人ものユーザーを意図せずにAmazonプライムへ登録させたとしてFTC(連邦取引委員会)より提訴されています(現在も訴訟継続中)。

法律順守 イメージ

その他のリスク

LTV(Life Time Value)の低下

LTVとは顧客生涯価値(Life Time Value)の略称であり、顧客となったユーザーが利用開始をしてから終了するまでの期間でどのくらい利益を得ることができたかという指標です。数年前から注目されている指標となり、マーケターにとってLTVの向上は重要課題となっています。

LTV低下の主な理由はダークパターン採用により、意図せずに契約をしてしまうユーザーがいることです。つまり、そのようなユーザーは当然直ぐにサービスを解約する可能性が高くなります。また、企業への信頼を失ったユーザーは買い切りモデルの製品であっても、その企業や製品のリピーターになる可能性が低くなります。LTVが高ければ利用継続しているユーザーからの収益が積み上がっていきますが、LTVが低いと常に新規ユーザーの獲得数を増やし続けるしかありません。市場が飽和状態で新規ユーザー獲得が難しくなっている場合、LTV低下は中長期的にみて収益悪化の要因となりえます。

クレーム処理による社内の工数増加

ダークパターンを採用することでクレーム数を増やしてしまう可能性もあります。

  • 「Webに書かれている内容と契約内容が異なる」
  • 「解約したいけど解約をすることができない」

このようなことをユーザーが感じたら問い合わせ窓口へ連絡をする人もいるでしょう。その結果、クレーム等の窓口対応をする作業工数が増えていき、通常業務への支障に繋がります。このためダークパターンによるユーザー獲得は、一方でクレーム数の増加となる可能性があります。

ブランド毀損を引き起こす

ダークパターンを採用した企業に対してユーザーは、「あの会社はユーザーを騙して収益を上げていた」と感じるかもしれません。そうなればこれまで築いてきたブランドイメージに悪影響を与えることになります。運営企業への信頼性は、消費者が商品やサービスを選定する際の重要な判断基準になります。ブランド毀損は問題発覚後の一時的な収益低下だけではなく、信頼回復までの長期間に渡り様々な悪影響を与えることになります。

社員の就業意欲の低下や離職の引き金にもなる

ダークパターンが原因で、社員のモチベーション低下や離職の引き金となる可能性も考えられます。社員も家に帰れば一人の消費者(ユーザー)です。自分自身がどこかの企業のサイトで欺かれるのは嫌であるように、ダークパターンは、ユーザーの選択肢を狭め騙すような印象を与えることがあるため、誠実なマーケティング活動をしたいと考えるマーケターやデザイナーのモチベーション低下に至ることも想定されます。会社の方針やチームの意向により、現場レベルでそれに反発することが難しく、それに納得できずに退職に至るケースも考えられます。

今から始められるダークパターン対策

ダークパターンに陥らないためには客観的な視点を持つ人を巻き込みながら、組織体制を構築することが重要ですが、組織規模が大きい場合、時間を要するかもしれません。そのような場合は、先ずは現場レベルでの対応が可能な下記の対策の実施を検討しましょう。

チェックリストの作成と運用

自社サービス運用の際にダークパターンに該当する可能性があることデザインやUIを列挙して、簡易版でも良いのでダークパターンのチェックリストを作ってみましょう。ここで重要なことは自社サービスに特化したチェックリストを作ることです。新たな施策を打ち出す際に、必須チェック項目として運用することで、ダークパターン有無を再検討する良い機会となり、関係者の意識向上に繋がります。

ユーザーからのフィードバックを積極的に収集

アンケートフォームの設置やSNSの活用を行い、ユーザーからのフィードバックを積極的に収集することで、ユーザーが感じた不満を直接収集することができます。様々な意見をユーザーから直接収集することで、自分達だけでは分からなかったダークパターンに該当するケースを把握できるようになります。

ダークパターンを積極的に避け、ユーザー評価を上げた事例

ダークパターンを積極的に避けることで「誠実な会社である」とユーザーから評価されることもあります。例えば、大手動画配信プラットフォームであるNetflixは解約をしやすいサービスということで有名で、退会手続きの工程で何度も引き止められるということはありません。
また、2020年に入会後1年以上利用していない、あるいは2年間利用していないユーザーを対象に、メールとアプリで契約継続の確認を行い、もし反応がない場合は自動的に解約するという発表も行いました。
サブスクリプションサービスでは解約率を下げることで利益を増やしていく構造があるため、一般的には、休眠ユーザーに対して解約を促すことは利益を減らすことに繋がると考えられますが、Netflixの場合、このニュースが様々なWebサイトで取り上げられ、結果的に「Netflixはユーザー体験を大事にしている」という評価を得ることになりました。

ユーザーからの信頼を得るために適切な対策を

ここまで紹介をしたように、ダークパターンは効率的でかつ数値に直結するマーケティングを実行しており、知らず知らずにダークパターンを使っていたということが起こります。
ダークパターンの手法はマーケティングの媒体や時代によって細部は変化しますが、ダークパターンを回避するための基本的な考え方は「消費者(ユーザー)に対して誠実であれ」の一言に尽きます。
現在の日本では直接的な規制はありませんが、社会問題として認知されているため、ユーザーから信頼をされるためには法令遵守だけではなく、ユーザーが期待するレベルでの対応が求められます。結局、誠実に対応する企業がユーザーの信頼を獲得し続けることができるのです。

ダークパターンに関する情報は常に世界中で更新されています。このため、様々なパターンを把握して適切なマーケティング活動をすることが今後のマーケティング担当者に求められています。

欧米でのダークパターン規制の動向と日本企業に求められる対応

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