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【特集】情報漏洩時の有事対応シリーズ⑥:内部不正対応時のヒアリングとインタビュー(実務編)


*今回は情報漏洩時の有事対応シリーズ⑤:内部不正対応時のヒアリングとインタビュー(理論編)の続編となります

情報漏洩の際、初期対応での発見事項を精査の上、内部不正の可能性が高い場合、不正調査(対物・対人調査)を実施する必要があります。その際重要なのは、被疑者や重要参考人とのインタビューになり、やり直しがきかないため、成否のカギは「周到な事前準備」になります。今回は過去の成功体験と失敗体験を踏まえて、インタビュー実務の重要ポイントを①理論編と②実務編の2回に分けて説明します。

過去の実務経験からの学び(成功のコツ編)

a. 被面談者心理を理解する

あなたが今日突然、法務部の方から「面談したい」との通知を受けたら、どう思いますか?何について聞かれると思いますか?少なくともポジティブな印象は持たないと思います。被面談者も同じ心理状態です。つまり、「なぜ自分が指名されたのか?」、「他の人はどこまで話をしたのか?」、「どこまで正直に話すべきか?」、「プライバシーは保たれるのか?」、「報復の恐れはないのか?」といった不安や疑心暗鬼に陥っているかもしれません。それを払拭させるためにも、面談者に求められるのは、「この人となら情報を共有したい」と思わせることであり、中立的な態度、冷静、喋り過ぎない等、留意点が幾つかあります。

b. 最大のチャンスは最初の1回だけ

ヒアリングとインタビューどちらの場合でも、面談アレンジの大義名分は、職場環境アンケート調査、ランダムな社員意識調査等、ハレーションを起こさずに調査本来の目的達成できる形でアレンジするのが得策です。隠蔽工作や口裏合わせのないピュアな状況下での面談は、最初の1回だけと覚悟して「周到な事前準備」を実施しましょう。また、2回目・3回目の面談も必要になるかもしれないため、非難や糾弾しないのは勿論、ネガティブな形で終えるのではなく、できる限り被面談者と良好な関係を維持する形で最初の面談を終えることが重要になります。

c. 社内から様々な圧力や干渉に物怖じしない

内部不正の可能性が高い場合、特に組織的な関与や幹部職の関与が疑われる場合、責任の所在や管理監督責任も問われるため、社内の関連部署や上層部の方から、調査の進捗状況や発見事項の詮索等、様々な圧力や干渉等を受けることがあります。確定していない調査結果について、例え相手が上級管理職の方であっても、必要な報告相手以外に口外することは、調査本来の目的達成の障害になってしまうことがあります。具体例として、色々干渉してきた上級管理職の方自身が、実は内部不正の当事者であり、他の関与者に情報がリークしてしまった事案を何度か目にしたことがあります。

調査の品質管理上、調査チームの独立性・中立性維持は必須になります。このため関与する調査メンバーも、調査対象にならない部外者であり、秘匿性や機密性を厳守し、ストレス状況下でも業務を完遂できる方を少数選定し、事案の特徴に応じて選出する必要があります。なお、内部不正が組織的関与により大規模且つ深刻な場合は、調査責任者は意図的に、各調査メンバー間への情報共有を必要最小限で断片的なものに留めておき、調査の全体像は明かさないことがあります。この理由として、思い込み等による品質低下への配慮と、外部リークのリスク低減が挙げられます。

重要性の高い事案や調査の独立性・中立性維持が困難な事案については、会社の方だけでなく、実務経験豊富な外部専門家を調査メンバーに加えることも選択肢の一つとして検討する余地があります。

d. 答えやすい質問を上手く活用する

過去の経験から、被面談者は自分のことに関する発言には消極的ですが、他者批判については積極的である傾向があります。インタビューの際には、その心理を利用してインタビュー戦略(インタビュー・アウトライン)を作成し、重要証言を引き出すように質問していくのもテクニックの一つになります。

e. メモの取り方に注意する

面談者チームは通常2~3人で構成され、そのうち1人が議事録(メモ)作成し、同時に被面談者が発する非言語的情報(例:顔の表情やジェスチャー)も観察します。メモ作成について、インタビュー中のPC利用は便利ではありますが、タイプ音がインタビューの障害になる場合は差し控える必要があります。また、タイプ音やメモ取りの密度で、何が重要で何が重要でないか、被面談者に分かってしまうリスクにも留意する必要があります。メモを取る際に重要なのは、①事実と②見解・推測・意見を混同することなく、分けて整理し、インタビュー終了後、できるだけ速やかに清書することになります。

なお、録音機やビデオの利用については賛否両論ありますが、情報の正確性や網羅性を確保できるメリットと、被面談者が委縮してしまい本来入手可能な情報収集が難しくなるというデメリット、事案の特徴等を総合的に勘案して、会社側の判断で利用要否を決めることが多いようです。また、被面談者側も隠れて面談者の言動を録音している可能性があるため注意が必要です。

海外捜査当局のインタビュー手法

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